ワーキングメモリは認知心理学の専門用語ですが、最近では一般にも広く知られるようになりました。
脳の中に入ってきた情報を一時的に記憶し、整理し、不要なものは即座に捨てるという役割をもつものです。
パソコンに詳しい方であれば、「メモリ」と聞いてピンとくるかもしれません。
発達障害の方には、このワーキングメモリの働きが弱い方がいらっしゃいます。
それによってたとえば、情報の一時記憶に困難があれば、黒板の内容が覚えられずにノートをとるのが遅かったり、整理に困難があれば、正しい状況を飲み込むことができず、周りからは適切でないと思われる言動をしてしまったりします。
ただし、ワーキングメモリの強弱については、発達障害と診断されていなくても人それぞれです。
私は理系なのに計算が著しく苦手で、すぐに間違えてしまうのですが、それはワーキングメモリの弱さに原因があったのではないかと今は思います。
このワーキングメモリ、知識の広まりとともに注目されるのは、強化法です。
ワーキングメモリを強化して、このような困難が解決されますとか、こんなことができるようになりますみたいなことです。
しかし、私はワーキングメモリ自体を強化するということには懐疑的です。
もちろん、時間をかければ強化することはできなくはないのかもしれませんが、その時間をワーキングメモリの特性を見極め、どのように使うかを練習することに費やした方が、ずっと生産的であると考えています。
たとえば短期記憶が極端に苦手なのであれば、無理に暗算をしようとしないで、時間はかかるけど途中式をちゃんと書いてしまった方がむしろ速く正確だということもありえます。
また、きちんと整理しておくのが苦手なのであれば、ノートはすべての情報を一冊にまとめて書くというように決めてしまうのもありです。
そのノートを見ればどこかに必ず書いてあるので、どのノートに書いてあったかわからなくなって探すより、時間短縮になるかもしれません。
ワーキングメモリは、「どのように説明されたらわかりやすいか」ということにも影響します。
図示して視覚的に説明するのがわかりやすいのか、それとも言葉でストーリーとしてとらえたほうがわかりやすいのかということです。
早いうちに自分のワーキングメモリの特性をとらえ、その特性をうまく活かしていくことが大切だと考えます。
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